「新たな金融の基盤」 ガイトナー財務長官、サマーズNEC委員長 WP
2009年 06月 15日
「新たな金融の基盤」
米ワシントン・ポスト紙 6/15付
ティモシー・ガイトナー財務長官及びローレンス・サマーズ国家経済会議委員長
A New Financial Foundation
By Timothy Geithner and Lawrence Summers
過去2年間、我々は世界大恐慌以来最も深刻な金融危機に直面している。金融システムはリスクの削減・分散という本来の機能を実現出来ずにいる。むしろ、リスクを増大させており、この結果として生じた経済の収縮によって全世界の家庭と企業が被害を受けている。
我々は、米国を景気回復の軌道に乗せるために類い希なる措置を実施してきた。しかし、単純にダメージを修復するだけでは不充分である。幾ら我々が景気回復に向けた努力をしているとはいえ、一般の米国民が感じている経済的な痛みは、今、我々がもっと力強く安全なシステムのための基盤を構築し始めなければならないということを、日々、思い出させてくれるのだ。
今回の金融危機には多くの原因がある。根本にあるのは貯蓄と消費の全世界的な不均衡であり、これは、適切に理解されていなかった金融商品の利用が拡散し、金融機関の近視眼と過剰なレバレッジの中で発生していた。しかし、今回の危機というのは金融分野の監督・規制の根本的な失敗の結果でもあるのだ。
金融規制に係る米国の枠組みは、ギャップと欠点と所管上の重複だらけであり、金融面でのリスクに関する時代遅れの概念に苦しんでいる。ここ数年、金融セクターにおけるイノベーションのペースは規制の近代化のペースを上回っており、市場全体と市場参加者全体を基本的には非規制対象にしてしまっていた。
このため、今週、オバマ大統領の指示により、また、連邦議会、規制当局、ビジネスや消費者のグループ、学界及び専門家との数ヶ月にわたる協議を経て、オバマ政権は金融分野の規制・監督を近代化するための計画を前進させる予定である。この目的は、もっと安定的な規制の体制(レジーム)を構築することである。この規制レジームは、柔軟性があり実効的で、システムを過剰性から守る一方で、金融イノベーションの利益を確保することが出来るようなものでなければならない。
この提案を進めていくにあたり、オバマ政権は米国の現行の規制体制が抱える以下の五つの重大な問題を重視してきている。我々が考えるに、こうした問題が今回の危機の発生・増大に直接的な役割を担っていたのである。
第一に、現行の規制は、個別の金融機関の安全性と健全性に重点を置いているが、システム全体の安定性は重視していない。その結果、各金融機関は、システム全体が困難に陥った際に安全性を維持する上で必要となる資本や流動性を維持するよう求められてはいない。少数の大企業のトラブルがシステム全体をリスクに陥れるような世界において、そうしたアプローチでは不充分である。
オバマ政権の提案は、全ての金融機関に対して資本・流動性の要件を引き上げることで、また、相互の関連性が深い最大手の企業に対する要件を更に厳格化することで、こうした問題に対処する方針である。また、仮に破綻した場合にはシステム全体の安定性を脅かしかねない相互関連性が深い全ての主要企業は、連邦準備理事会による総合的な監督に従うことになるし、我々は金融システム全体の責任をより広範な形で調整するために規制当局による評議会を設置する予定である。
第二に、金融システムの構造は、(資産担保証券市場など)伝統的な銀行システムの枠外での金融活動の大幅な増大により、変化している。理論上、証券化はクレジットのリスクをより広範に広めることで当該リスクを減らすべきものである。しかし、実際には、借り手と貸し手の間の直接的な結び付きを遮断することで、証券化は融資基準の低下を引き起こし、これは市場の失敗につながり、住宅ブームを増大させ、その破綻を深刻なものにしていったのだ。
オバマ政権の計画では、資産担保証券の発行主体に対して厳格な報告義務を課し、投資家や規制当局による信用格付機関への依存を減らし、また、恐らく最も重大なこととして、証券化のオリジネータ(原資産保有者)、スポンサー(保証者)及びブローカー(仲介業者)に対して、その事業活動に金融面での利害関係を保持することを要請することになっている。
本計画は、先物取引及び債券市場の規制のハーモ、支払・決済制度に係るセーフガードの強化、「店頭」デリバティブ(金融派生商品)についての力強い監督の実施も要請する。デリバティブに係る全ての契約が規制対象となり、デリバティブの取引業者全体が監督下に置かれ、市場操作及び不正行為に対するルールを実施するために規制当局の強化が予定されている。
第三に、現行の規制体制は、消費者及び投資家に対して適切な保護を提供していない。サブプライム住宅ローンに対する消費者保護の弱さが今回の金融危機の大きな原因である。今回の危機により、クレジットカードから年金に至るまで、幅広い分野の金融商品で消費者保護が不適切であったことが明らかになった。
クレジットカード産業における略奪的な融資や不正な業務慣行に立ち向かうために取られた最近の措置を基本として、オバマ政権は、金融分野全体での消費者及び投資家に対する保護の枠組みを強化する方針である。
第四に、連邦政府は金融危機を抑制・管理する上で必要なツールを有していない。非銀行系金融機関の無秩序な破綻を回避するために連邦準備理事会の融資権限に頼ることは、今回の危機においては重大な役割を果たしているものの、長期的に見れば、適切な又は効果的な解決策ではないのである。
この問題に取り組むために、我々は、その破綻が金融システムの安定性を脅かしかねない全ての金融持ち株会社についての秩序ある解決策が可能となるような解決のメカニズムを構築するつもりである。この機関は異常事態の時にのみ利用可能となる予定だが、これにより、もはや政府は救済をするのか、それとも金融を破綻させるのかの選択を強要されなくて済むようになるだろう。
最後の点として、第五に、我々はグローバル化された世界に暮らしているのであり、我々が国内で実施するアクションは(それが如何に堅実かつ健全な内容であれ)、仮に我々が国内基準に沿って国際的な基準を引き上げることが出来なければ、殆ど実効的ではないだろう。我々は、世界全体での規制・監督の改善に向けた取り組みを主導していくつもりである。
ここでの議論は、オバマ政権の今後の提案についての簡潔な予備的説明を示したに過ぎない。一部の人々は、今は金融規制の将来を議論している場合ではないと主張するだろう。このような議論は今回の危機が完全に去るまで待つべきだと。こうした批判は、我々が直面している困難の性質を誤解している。過去の全ての金融危機と同様に、今回の危機というのも信頼と信用の危機なのである。米国民に対して、米国の金融システムはより良い監督下に置かれるのだと確約することは、米国経済の景気回復にとって極めて重大である。
米国の金融システムに対する国民の信頼を取り戻すことで、オバマ政権の改革は、金融システムがその最も重要な役割を果たすことを可能とさせることだろう。すなわち、労働者の所得や貯蓄を融資に変え、家庭が住宅や自動車を購入するのを支え、親が子供たちを学校に通わせるのを助け、実業家の起業を支援するのである。今こそ行動の時である。
米ワシントン・ポスト紙 6/15付
ティモシー・ガイトナー財務長官及びローレンス・サマーズ国家経済会議委員長
A New Financial Foundation
By Timothy Geithner and Lawrence Summers
過去2年間、我々は世界大恐慌以来最も深刻な金融危機に直面している。金融システムはリスクの削減・分散という本来の機能を実現出来ずにいる。むしろ、リスクを増大させており、この結果として生じた経済の収縮によって全世界の家庭と企業が被害を受けている。
我々は、米国を景気回復の軌道に乗せるために類い希なる措置を実施してきた。しかし、単純にダメージを修復するだけでは不充分である。幾ら我々が景気回復に向けた努力をしているとはいえ、一般の米国民が感じている経済的な痛みは、今、我々がもっと力強く安全なシステムのための基盤を構築し始めなければならないということを、日々、思い出させてくれるのだ。
今回の金融危機には多くの原因がある。根本にあるのは貯蓄と消費の全世界的な不均衡であり、これは、適切に理解されていなかった金融商品の利用が拡散し、金融機関の近視眼と過剰なレバレッジの中で発生していた。しかし、今回の危機というのは金融分野の監督・規制の根本的な失敗の結果でもあるのだ。
金融規制に係る米国の枠組みは、ギャップと欠点と所管上の重複だらけであり、金融面でのリスクに関する時代遅れの概念に苦しんでいる。ここ数年、金融セクターにおけるイノベーションのペースは規制の近代化のペースを上回っており、市場全体と市場参加者全体を基本的には非規制対象にしてしまっていた。
このため、今週、オバマ大統領の指示により、また、連邦議会、規制当局、ビジネスや消費者のグループ、学界及び専門家との数ヶ月にわたる協議を経て、オバマ政権は金融分野の規制・監督を近代化するための計画を前進させる予定である。この目的は、もっと安定的な規制の体制(レジーム)を構築することである。この規制レジームは、柔軟性があり実効的で、システムを過剰性から守る一方で、金融イノベーションの利益を確保することが出来るようなものでなければならない。
この提案を進めていくにあたり、オバマ政権は米国の現行の規制体制が抱える以下の五つの重大な問題を重視してきている。我々が考えるに、こうした問題が今回の危機の発生・増大に直接的な役割を担っていたのである。
第一に、現行の規制は、個別の金融機関の安全性と健全性に重点を置いているが、システム全体の安定性は重視していない。その結果、各金融機関は、システム全体が困難に陥った際に安全性を維持する上で必要となる資本や流動性を維持するよう求められてはいない。少数の大企業のトラブルがシステム全体をリスクに陥れるような世界において、そうしたアプローチでは不充分である。
オバマ政権の提案は、全ての金融機関に対して資本・流動性の要件を引き上げることで、また、相互の関連性が深い最大手の企業に対する要件を更に厳格化することで、こうした問題に対処する方針である。また、仮に破綻した場合にはシステム全体の安定性を脅かしかねない相互関連性が深い全ての主要企業は、連邦準備理事会による総合的な監督に従うことになるし、我々は金融システム全体の責任をより広範な形で調整するために規制当局による評議会を設置する予定である。
第二に、金融システムの構造は、(資産担保証券市場など)伝統的な銀行システムの枠外での金融活動の大幅な増大により、変化している。理論上、証券化はクレジットのリスクをより広範に広めることで当該リスクを減らすべきものである。しかし、実際には、借り手と貸し手の間の直接的な結び付きを遮断することで、証券化は融資基準の低下を引き起こし、これは市場の失敗につながり、住宅ブームを増大させ、その破綻を深刻なものにしていったのだ。
オバマ政権の計画では、資産担保証券の発行主体に対して厳格な報告義務を課し、投資家や規制当局による信用格付機関への依存を減らし、また、恐らく最も重大なこととして、証券化のオリジネータ(原資産保有者)、スポンサー(保証者)及びブローカー(仲介業者)に対して、その事業活動に金融面での利害関係を保持することを要請することになっている。
本計画は、先物取引及び債券市場の規制のハーモ、支払・決済制度に係るセーフガードの強化、「店頭」デリバティブ(金融派生商品)についての力強い監督の実施も要請する。デリバティブに係る全ての契約が規制対象となり、デリバティブの取引業者全体が監督下に置かれ、市場操作及び不正行為に対するルールを実施するために規制当局の強化が予定されている。
第三に、現行の規制体制は、消費者及び投資家に対して適切な保護を提供していない。サブプライム住宅ローンに対する消費者保護の弱さが今回の金融危機の大きな原因である。今回の危機により、クレジットカードから年金に至るまで、幅広い分野の金融商品で消費者保護が不適切であったことが明らかになった。
クレジットカード産業における略奪的な融資や不正な業務慣行に立ち向かうために取られた最近の措置を基本として、オバマ政権は、金融分野全体での消費者及び投資家に対する保護の枠組みを強化する方針である。
第四に、連邦政府は金融危機を抑制・管理する上で必要なツールを有していない。非銀行系金融機関の無秩序な破綻を回避するために連邦準備理事会の融資権限に頼ることは、今回の危機においては重大な役割を果たしているものの、長期的に見れば、適切な又は効果的な解決策ではないのである。
この問題に取り組むために、我々は、その破綻が金融システムの安定性を脅かしかねない全ての金融持ち株会社についての秩序ある解決策が可能となるような解決のメカニズムを構築するつもりである。この機関は異常事態の時にのみ利用可能となる予定だが、これにより、もはや政府は救済をするのか、それとも金融を破綻させるのかの選択を強要されなくて済むようになるだろう。
最後の点として、第五に、我々はグローバル化された世界に暮らしているのであり、我々が国内で実施するアクションは(それが如何に堅実かつ健全な内容であれ)、仮に我々が国内基準に沿って国際的な基準を引き上げることが出来なければ、殆ど実効的ではないだろう。我々は、世界全体での規制・監督の改善に向けた取り組みを主導していくつもりである。
ここでの議論は、オバマ政権の今後の提案についての簡潔な予備的説明を示したに過ぎない。一部の人々は、今は金融規制の将来を議論している場合ではないと主張するだろう。このような議論は今回の危機が完全に去るまで待つべきだと。こうした批判は、我々が直面している困難の性質を誤解している。過去の全ての金融危機と同様に、今回の危機というのも信頼と信用の危機なのである。米国民に対して、米国の金融システムはより良い監督下に置かれるのだと確約することは、米国経済の景気回復にとって極めて重大である。
米国の金融システムに対する国民の信頼を取り戻すことで、オバマ政権の改革は、金融システムがその最も重要な役割を果たすことを可能とさせることだろう。すなわち、労働者の所得や貯蓄を融資に変え、家庭が住宅や自動車を購入するのを支え、親が子供たちを学校に通わせるのを助け、実業家の起業を支援するのである。今こそ行動の時である。
by abetchy | 2009-06-15 23:08 | 論調 | Trackback | Comments(0)
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